田家春望
出門何所見
春色満平蕪
可嘆無知己
高陽一酒徒
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中国・唐代の詩人・高適(702?‐765年) 作の
五言絶句・田家春望の書です。
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<書き下し訳>
門を出でて何の見る所ぞ
春色 平蕪に満つ
歎ず可し 知己無きを
高陽の一酒徒
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20年以上前、
我が家での茶事・酒宴の部において、
アトラクションとして、
”何書いてるかわからん軸”を掛けて、
ゲストみんなと あーでもないこーでもない と
解読ごっこ して遊んでいました。
数年間遊んでいるうち、
文学が専門で学芸員資格を持つ、若手茶人が正解を教えてくれました。
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<井伏鱒二 現代語意訳>
家を出たれどもあてどもないが、
正月気分がどこにも見えた、
ところが、会いたい人もなく
阿佐ヶ谷あたりで大酒飲んだ。
さすが文豪・井伏鱒二、
「文壇酒徒番付」で横綱とされていただけある!
(もちろんちゃんとした解釈の解説もあります。
各自、ネットで検索ください。)
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というわけで、 新春~春 の 酒の場 にピッタリ!
我が家の茶事での定番お軸となりました。
(市民茶会でも掛けましたが、)
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また 亡くなった師匠に見せてみたところ、
一瞥し「こりゃ”相剥ぎ”や」と。
(墨の色が薄いなどから)
さらに「本紙に比べ 表具が古すぎる!」と。
風帯になっている金襴の金糸の痛み具合からみて安土桃山か室町時代のものだそう。
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在野・江戸時代の陶磁器が専門の
数寄者・わが師匠でしたが、
この的確すぎるコメントには、心底・感服しました!
(さすが若いころから身を切って(贋物もたくさん掴まされて)きただけはある)
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”相剥ぎ”までする この書 って、誰の筆によるもの ?
<”相剥ぎ”の場合、表側が【真作】なら、裏側も 【真作】とされます。>
箱には 光悦 とあり、落款も 本阿弥光悦 のにそっくりやなあ。
(私は信用しておらず、真贋を究明する気はありません)
ウチの茶事で、酒宴たけなわになった頃、
「床のお軸 古筆で 作者不詳としてますが、
箱にはこんなこと書いてますねん!
でも 相剥ぎ であることだけは確かです。
だから、ひょっとしたら 真作 かもですわ。
世間に知られて 重要文化財 になったらどうしよ?」
としゃべったらウケます。